ふとした瞬間、思いだす。
まっすぐのびた背筋と、何にも負けない強い瞳を。
船の小さな窓から見える、広がる藍色と、輝く星の瞬き。
果てのないそれはを見るのはまるで、行く先の見えない自分のこれからのようで、時々、ひどく、不安になる。きらきらと宝石のような星が、いくつもいくつも無数に無限に輝くのに、美しいと思う半面無性に恐ろしく感じるのだ。
一見澱みなどない、このそらに、一体どれだけのものがのみ込まれたのだろう。命も、未来も。
それ以上、見たくなくて。視界から追い出すように蒼眼を閉じた。
(―――――そう、彼も)
閉ざした瞼のうらに、浮かびあがってきた面影。
もしかしたら、このそらに沈むかもしれない。彼は、そういう世界にいるひとだから。
それは、明日かも知れない半年先かもしれない。もしかしたらずっと訪れないかもしれないし、いままさに、この瞬間、かもしれない。
そんな、どうしようもない思いに駆られる時は。
どうしようもなく、苦しい時は。
無数に瞬く星よりも、ずっとずっと強く輝く、あの鋭くて優しい赤褐色を思い描く。
何にも負けないあの姿を。ゆるぎのない、背中を。
そして小さく小さく。大切なもののように。呼ぶ。
その名前を。
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ふとした瞬間、思いだす。
やさしい手と声。それから、涙。
手にしたカップを机に置き、祈るようにまぶたを下ろす。いつか、遠い昔、神に祈った時のような真摯さで‥‥生憎、祈る神は亡くしてしまったけれど。
彼女は今、どうしているのだろうか。何をしているのかは、分からない。でもきっと。
(たたかっている)
彼女も。
きっと、彼の選んだものよりも、ずっと難しい方法で。それは確信。彼女が彼女である証明をしてほしい。彼女の、やり方で。そう、誰よりも切実に、願う。
だからきっと、彼も彼の証明をするために、たたかう。戦い続ける。それを、選んだのだから。
――――――ただ、今は。
この一瞬だけは。ほんの僅かな安寧を。心の安らかさを。
彼女の姿を思い描きながら、不思議と感じる穏やかな気持ちをかき消してしまわないように、小さく小さく、大切なもののように。呼ぶ。
その名前を。
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進む道は少し違う。けれど、その道筋がまた交差する日を待っている。
だから、
万感の願いと思いをこめて。どうか無事で。どうか迷うことのないように。それから、ほんの少しの、
会いたいと、焦がれる気持ちを混ぜて。
名前を呼ぼう。
遠く遠く離れたあなたに、つながる気がするから。
少しだけ背筋が伸びる。あなたに恥じる自分でいたくはないのだと。勇気をもらえる、つよくなれる、
気がするから。
それは、まるで。
魔法の呪文
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わたしのなかで刹マリはこんな感じ。
お互いに、相手に恥じる自分でいたくない、だから離れていても、相手を思える、みたいな関係がすき。
っていうか、単に、本編でお互い名前を呼び過ぎだとおもう、って、ただそれだけなんですけど。
20081203