「折角の七夕なのに雨かぁー、残念」
「ニホンという国の気候から考えればこの時期に雨が降るなどそう珍しいことではない。
国民のくせにそんなことも知らんのか、この7月7日過ぎの七夕飾り並み役立たずが」
「‥‥あいっ変わらず雰囲気も何も無い奴だよねアンタは‥‥。そんなことくらい知って‥‥なかったけど。
でも、雨が降ってると川が渡れなくて、織姫様と彦星様は会えないんだから、可哀想だ、って思うじゃない!」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ふむ?」
「いや、アンタにそれなりの感性を期待した私がバカ――――ってぎゃあああナチュラルに人を窓から突き落とそうとすんなぁ!!」
「なんだ。人が親切で川の向こうまで逝かせてやろうというのに」
「違う!!川違い!!それ、天の川じゃなくて三途の川だし、百歩譲って天の川でも私が越えても意味ないでしょ!?」
「なんだ、我儘だな」
「どこが!?生存を許してほしいってすごくささやかな願いじゃないの!?」
「愚問だな」
「‥‥あ、そうだよね‥‥私ここじゃ人権ないんだったよね‥‥」
「しかし、この七夕とやら、やはり解せんな」
「何が?」
「短冊に願いを書くこともただ宇宙で燃えているだけのカタマリに願掛けすることも、何故動きもしないそのカタマリが年に一度会うことができることになるのかも、まるで理解できない」
「(‥‥うっわ、いろんなものを全否定したこいつ)」
「あとは、」
「?」
「伝説とやらの都合上なのだろうが‥…
何故年に一度会うだけで満足できるのだ、その織姫と彦星とやらは」
「は?」
「年に一度など退屈だ。つまらん。‥‥我が輩が、その彦星、とやらだったら」
攫ってやるのに。
「なぁヤコよ。そう思わないか?」
「‥‥え?」
「何が『え?』だ。この間抜け面」
「う、うるさい!!――――っ!し、知らないなんでもない!!」
―――――ああなんてこと!!
変な流れで話を振ってくれちゃったりするもんだから。
一瞬、ほんの一瞬だけ。まるでお前をさらってやるよ、って言われたような気に、なったじゃないの!!
さいあくさいあく、ああもう最低!!!
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拍手に。久々に見たら意外に甘くてびっくりした。
20150204再録